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検査項目説明




















食品 汚染指標菌
一般生菌数
 一般的な食品の細菌汚染の程度を示す代表的な指標として、食品衛生法に基づく食品の規格基準に規定されています。この検査は、食中毒菌のほとんどが「中温細菌」であることに基づき、「好気性中温細菌」が対象です。
 そのため、特殊培養条件(嫌気状態など)が必要な細菌は検出できませんので、検出目的菌に応じ別の検査が必要です。また、「菌数」を求めるだけで、発育した細菌の「菌種名」はわかりませんが、「一般生菌数」が多い場合には、衛生的取り扱いが悪かったおそれがあり、病原菌が存在する可能性が高い事を示します。

大腸菌群数
 食品衛生学上の大腸菌群とは「乳糖を発酵して酸とガスを産生するグラム陰性通性嫌気性桿菌」です。
 以前は「糞便による汚染指標」として広く用いられていました。この条件を満たす細菌群はヒトや動物の糞便に限らず、自然界にも広く分布することから、最近では「衛生管理における汚染指標」として広く使用されています。主な検査対象は「加熱食品」です。検出された場合は、加熱処理不足、加熱後の二次汚染を示します。

大腸菌
 糞便系大腸菌群のうち「IMViC試験」で「++--」「-+--」のパターンを示すものを「大腸菌」といいます。糞便系大腸菌群とは「大腸菌群の中で44.5℃±0.2℃で発育し、乳糖を分解しガスを産生する細菌群」です。
 「食品衛生法の成分規格にあるE.coli」は糞便系大腸菌群を意味します。(細菌学上のE.coliと定義が異なります)糞便系大腸菌群、大腸菌とも「糞便、腸管系病原菌の汚染指標」として使用されています。
 主な検査対象は「未加熱食品」です。検出された場合は、比較的新しく糞便汚染を受けた可能性を示します。

真菌(カビ・酵母)
 真菌(カビ・酵母)は土壌、水、空気など自然環境中に広く分布しています。日本の気候条件は、カビの発育に適しており、味噌や醤油、酒などの製造にカビを利用しています。カビが作る物質で、人や動物に有害な化学物質を「カビ毒」と呼んでいます。食品の種類(農産物、ジュースやソースなど)、保存条件(低温、長期保存)により、流通や保存の間に危害を受ける可能性があります。
食中毒原因ウイルス
ノロウイルス
 ヒトの小腸粘膜でのみ増殖するウイルスで、感染力が強く10~100個程度で感染します。
 食中毒としては、小型球形ウイルス(SRSV)の名称で平成10年から統計が取られています。平成15年からはノロウイルスと名称が改められています。(2002年8月、国際ウイルス学会で命名されました)
 二枚貝、水、ノロウイルスに汚染された飲食品が原因食品として報告され、生カキを食べた発症者の約70%からノロウイルスが検出されます。また、感染者の便や嘔吐物への接触、飛沫による二次感染を起こすことがあり、学校や保育園、老人施設などでの集団発生もみられます。これらの集団発生では、原因食品が特定できない事例がほとんどです。全く症状が無いまま、感染に気づかない人から感染が広がる事例もあり、石鹸と流水での手洗いが重要視されています。
潜伏期間:
数時間~数日(平均1~2日)

臨床症状:
吐き気、おう吐、下痢(発症しない人、風邪のような症状で済む人もいます)

予防方法:
食品の十分な加熱と二次汚染の防止、手洗い・二次汚染の予防(アルコール消毒は無効)

食中毒原因菌
赤痢菌
 感染力が極めて強く、少量の菌で感染するため、わずかに汚染された手指、食品、水などからも経口感染します。
 便に排出される菌なので、海外の衛生状況の悪い国からの帰国者などから、患者が発生します。人から人へ感染するので、国内では、人同士の接触が多い保育園や学校、福祉施設などでの集団発生、直接手指が触れる食品(にぎり寿司など)からの感染報告があります。
 「細菌性赤痢」は、3類感染症です。
潜伏期間:
1~5日(多くは3日以内)

臨床症状:
大腸炎(粘膜の出血性化膿炎)、発熱、下痢、おう吐、腹痛を伴うしぶり腹、膿・粘血便

予防方法:
飲料水、食品の十分な加熱と二次汚染の防止、手洗い


サルモネラ属菌
 自然界に広く分布し、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類が腸管に保有している細菌で、2500種以上に分類されています。食肉、鶏卵やその加工品(マヨネーズ、クリームなど)が代表的な原因食品ですが、最近、食中毒以外にペットの動物や爬虫類(カメなど)からの感染も問題になっています。この菌による食中毒は、サルモネラ属菌に汚染された食品を摂食し、サルモネラ属菌が腸管で増殖することによって起こる感染型食中毒ですが、わずかな菌数(100個程度)で感染し、小児や高齢者では重症化しやすく、意識障害や菌血症を引き起こすこともあります。
潜伏期間:
8~48時間(3~4日後の発病もある)

臨床症状:
悪心、腹痛、下痢、嘔吐、発熱(38℃~40℃)

予防方法:
飲料水、食品の十分な加熱と二次汚染の防止、手洗い(ペットに触れた後にも重要)


チフス菌・パラチフスA菌
 チフス菌は「腸チフス」、パラチフスA菌は「パラチフス」の起因菌で、いずれもサルモネラ属菌です。
 チフス菌・パラチフスA菌で汚染された食品、飲料水の摂食で感染します。日本の代表的な伝染病でしたが、終戦後、衛生環境の改善などで患者数は激減しました。最近、国内で発生する患者の大部分は海外で罹患して帰国後、発症する「輸入感染症」が多いようです。特徴的な症状が無いため、過去1カ月以内の海外渡航歴などが診断の参考になります。
 「腸チフス」「パラチフス」は3類感染症です。
潜伏期間:
7~14日

臨床症状:
高熱(39℃以上)、徐脈(脈が遅い)、バラ疹(バラの花に見える赤い斑)、脾腫、下痢

予防方法:
飲料水、食品の十分な加熱と二次汚染の防止、手洗い


病原性大腸菌
 多くの大腸菌は病原性を示しませんが、一部に食中毒や急性胃腸炎の原因になる「病原性大腸菌」が存在します。
 この「病原性大腸菌」による食中毒は、食品と共に摂食された細菌が、腸管内で増殖することで起こる感染型の食中毒で、病原機序(病原因子と発症機序)により、現在5種類に分類されています。
①腸管侵入性大腸菌(EIEC):腸の細胞の中へ入り、赤痢のような症状(血便、発熱、腹痛)を起こします。
②毒素原性大腸菌(ETEC):産生するエンテロトキシンで、コレラのような激しい水様性下痢を起こします。
③腸管出血性大腸菌(EHEC):産生するベロ毒素により出血性腸炎を起こします。
 ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)とも呼ばれます。
 「腸管出血性大腸菌症」は3類感染症です。
④腸管病原性大腸菌(EPEC):症状は、下痢、腹痛で、サルモネラ属菌に似た急性胃腸炎を起こします。
⑤腸管凝集接着性大腸菌(EAEC):腸細胞に接着、産生するエンテロトキシンで、散発的に下痢を起こします。
潜伏期間:
12~72時間(①~⑤の菌種により異なる)

臨床症状:
下痢(血性を含む)、腹痛、発熱、嘔吐

予防方法:
飲料水、食品の十分な加熱と二次汚染の防止、手洗い

ベロ毒素(Vero Toxin)
 腸管出血性大腸菌(EHEC)が産生する毒素で、VT1、VT2の2種類があります。
 この毒素は、腸管上皮細胞を破壊して出血性腸炎を起こします。さらに、血液中に入ると、腎臓を障害し、急性腎不全、血小板減少、貧血などの症状を起こす「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を引き起こすこともあります。

カンピロバクター属菌
 家畜、ニワトリ、ペットなど動物の腸内に常在しており、現在15種に分類されていますが、ヒトの食中毒起因菌はカンピロバクター・ジェジュニで、1982年に食中毒起因菌として指定されました。この細菌は微好気的条件(3~15%程度の酸素濃度)で、ゆっくり発育します。主な食中毒の原因食品は、加熱不足の鶏肉・肉類で、100個程度の少ない菌数で感染します。最近、カンピロバクター感染者1000名あたり1名程度が「ギランバレー症候群」を発症することもわかってきて注目されています。
潜伏期間:
2~7日(平均2~3日)長いのが特徴

臨床症状:
腹痛、激しい下痢、発熱、吐き気(倦怠感、頭痛、筋肉痛などの症状が先に現れます)

予防方法:
食品の十分な加熱と二次汚染の防止、手洗い


腸炎ビブリオ
 増殖に塩分が必要な「好塩菌」で、沿岸の海水や海泥中にいて、海水温が20℃以上になると大量に増殖します。
 このため、海水温の高い夏場の魚介類には腸炎ビブリオの付着が多く、代表的な夏場の食中毒原因菌となっています。最近は、東南アジアなどからの「輸入魚介類」により、冬場でも腸炎ビブリオによる食中毒がみられます。
 好塩菌なので、真水(水道水)の中では増殖しません。増殖スピードが非常に速いのが特徴です。
潜伏期間:
平均12時間(短い場合は2、3時間)

臨床症状:
激しい腹痛と下痢、吐気、嘔吐、発熱

予防方法:
食品の十分な加熱と二次汚染の防止、手洗い、魚介類の真水洗浄


コレラ菌
 発生する患者の大部分はインドなど熱帯地域からの帰国者ですが、最近、国内由来の発生も確認されています。
 コレラ菌の産生するコレラエンテロトキシンで、急性の激しい水溶性下痢、嘔吐の症状を起こします。
 「コレラ」は3類感染症です。
潜伏期間:
数時間~5日(平均1~3日)

臨床症状:
激しい水溶性下痢、嘔吐、脱水症状(発熱、腹痛はない場合が多い)

予防方法:
飲料水、食品の十分な加熱と二次汚染の防止、手洗い


黄色(おうしょく)ブドウ球菌
 黄色ブドウ球菌は健康な人の手指、鼻前庭、咽頭などに常在し、自然界に広く分布しています。
 「おでき、にきび」などを化膿している部分の代表的な細菌です。人の手指を介して食品を汚染するので、特定の食品に限らず、あらゆる食品を汚染しますが、特に、おにぎり、サンドイッチなど「手作り食品」が食中毒の原因になる例が多いようです。黄色ブドウ球菌は加熱で殺菌することが出来ますが、食品中で増殖するときに産生する外毒素(エンテロトキシン)は100℃で30分間、加熱しても分解されないため、毒素を食品と一緒に食べることで食中毒を起こします。
潜伏期間:
1~5時間(平均約3時間)

臨床症状:
吐気、嘔吐、腹痛(下痢)

予防方法:
傷のある手指では食品を扱わない、十分な手洗い消毒、帽子やマスクの着用


セレウス菌
 セレウス菌は土壌、ほこり、水などの自然界に広く分布し、健康な人の10%では腸管内に保菌されています。
 菌の産生する毒素の違いにより、「下痢型」と「おう吐型」の2つに分類されますが、日本では「おう吐型」がほとんどで、米飯、焼き飯による食中毒が全体の73%を占めています。熱に強い「芽胞(がほう)」を作るため、調理中に加熱しても生き残る可能性があります。また、「おう吐毒」も、熱に強く126℃で90分加熱しても安定です。
潜伏期間:
1~5時間(おう吐型)

臨床症状:
吐気、嘔吐、腹痛(おう吐型)

予防方法:
一度に大量の米飯類を調理・室温放置しない

 5~60℃では、セレウス菌が増殖して毒素を産生する恐れがあります。食品の温度管理には注意して下さい。
学校保健検査
尿検査
 学校で毎年、行われる尿検査は学校保健法(学校保健安全法に改正)によって、腎臓病のスクリーニングとして義務づけられています。
 この学校検尿制度は、1974年に世界に先駆けて導入されたもので、慢性腎臓病の予防に成果をあげています。
 小児の慢性糸球体腎炎の半数以上、特に、IgA腎症は高率に学校検尿で発見されており、腎炎の早期発見・治療に貢献しています。
 検尿(一次検査)で「陽性」と判断された場合は、二回目の検尿(二次検査)が行われます。
 一次と二次の結果を総合的に判断して、必要に応じて三次検査(精密検査)が行われます。
 一次、二次の検尿で「陽性」だから、すぐに「腎臓病」ということではありません。採尿方法から見直し、血液検査結果なども合わせて、「本当に腎機能異常があるか」、「あるとすればどんな状態か」を三次検査で診断し、必要な生活指導や治療を受けます。
《参考》
 「尿潜血:陽性」:尿潜血だけ「陽性」の人の5%弱に腎臓の病気が見つかり、その一部に治療が必要になる場合もあるため、定期的な検尿を続け「蛋白尿」がでないことの確認が必要です。
 「尿蛋白:陽性」:「体位性蛋白尿(起立性蛋白尿)」「運動性蛋白尿」という、「健康児にもみられる蛋白尿」の可能性もあります。この蛋白尿の影響は「正しい採尿方法」で防ぐことが出来ます。正しい採尿でも「陽性」の場合は、定期的な検尿、専門医療機関への受診を勧められる場合もあります。
 「尿潜血・尿蛋白:陽性」:尿潜血と尿蛋白の両方が陽性であれば、腎臓病の可能性もあり、専門医の診察、専門医療機関の受診が必要となります。
※いずれの場合も自己判断せずに、「学校検診システム」に従い「正しい採尿方法」を実行し、「受診指導・生活指導」を受けるようにして下さい。
その他の項目
 尿糖:糖尿病の診断補助になる検査で、尿中の糖分を調べます。(糖尿病検診として)
 尿ウロビリノーゲン:肝臓障害や黄疸を調べる検査で、尿中のウロビリノーゲン量を調べます。
 尿沈渣:尿に含まれる成分を顕微鏡で検査し、赤血球、白血球、円柱(腎炎で現れる成分)を調べます。

ぎょう虫卵検査・寄生虫卵検査
 学校で毎年、行われる検便検査は学校保健法(学校保健安全法に改正)によって、寄生虫症のスクリーニングとして義務づけられています。
 近年は、子どもの寄生虫卵の保有率が低下したことから、平成6年に学校保健法施行規則が改正され、「小学第4学年以上の学年における検査の項目から除くことができる」ことになりました。しかし、海外からの輸入食品、無農薬生野菜の流行などと共に、定期的な検便習慣の無い成人の間で「海外由来の寄生虫」「過去に流行した寄生虫」「ペットからの感染」などが徐々に増加し、寄生虫感染症の問題も多様化してきています。
《参考》
 ぎょう虫卵「陽性」:肛門周囲に卵を産み付ける習性があるため、腸内にぎょう虫が寄生している証明になります。「駆虫薬」を服用し、駆虫後に再検査で「陰性」を確認することをお薦めします。
 生活を共にする家族に感染していることがよくあるので、家族全員の駆虫が必要になる場合もあります。
 寄生虫卵「陽性」:便中に確認された寄生虫卵の形態から、寄生している疑いのある寄生虫がわかります。
 代表的な腸管寄生虫は、蛔虫・鞭虫・横川吸虫などですが、最近は、「海外の寄生虫」や一度減少したはずの「過去の寄生虫」、ペットからの「動物の寄生虫」など、判定の難しいケースもあります。

検査項目説明
臨床・食品・環境衛生検査
ノロウイルス検査
腸内細菌検査
食品細菌検査
食品保存検査
拭き取り検査
落下細菌検査
砂場の環境衛生検査
学校保健検査
尿検査
ぎょう虫卵検査
寄生虫卵検査
容器一覧